障害者雇用枠で働いている方が「辞めたい」と感じたとき、一般の退職以上にハードルが高いと感じることがあります。「せっかく採用してもらったのに」「次の就職先が見つからないのでは」「支援者に反対される」——こうした不安から、退職を切り出せないまま心身の状態が悪化するケースも少なくありません。
この記事では、障害者雇用枠で働く方の退職に関する法的権利と、退職後に利用できる支援制度を解説します。
障害者雇用枠の退職が難しいと感じる理由
- 「せっかく雇ってもらったのに」という罪悪感:障害者雇用での就職活動が大変だった経験から、辞めることへの罪悪感が強い
- 支援者(ジョブコーチ等)への遠慮:就職を支援してくれた人に申し訳ないと感じる
- 次の就職先が見つかるか不安:障害者雇用の求人が限られていると感じている
- 合理的配慮を求めると「わがまま」と言われる:配慮を求めること自体を否定された経験がある
- 退職を伝える精神的負担が大きい:障害特性により、対面でのコミュニケーションが困難
合理的配慮は事業主の義務
障害者雇用促進法36条の3は、事業主に対して障害者への合理的配慮の提供を義務づけています。2024年4月からは民間事業主にも合理的配慮の提供が法的義務となりました。
合理的配慮の例
身体障害:バリアフリー環境の整備、通院のための勤務時間調整、補助機器の提供
精神障害:業務量の調整、静かな作業環境の確保、定期的な面談の実施
発達障害:業務指示の明確化、マニュアルの作成、感覚過敏への対応
知的障害:わかりやすい指示、業務の分解、ジョブコーチの配置
合理的配慮を求めたにもかかわらず提供されない場合、それは事業主の義務違反です。このような状況で退職を余儀なくされた場合、ハローワークで「特定受給資格者」として認定される可能性があります。
重要:合理的配慮を求めたことを理由とする不利益取扱い(降格、配置転換、解雇など)は、障害者雇用促進法で禁止されています。このような行為があった場合は、都道府県労働局に相談してください。
障害者雇用枠でも退職の権利は同じ
障害者雇用枠であっても、退職の権利は一般の労働者と全く同じです。民法627条により、退職届を提出してから2週間で退職が成立します。障害があることを理由に退職を制限されることは一切ありません。
有期雇用契約(契約社員)の場合
障害者雇用枠では有期雇用契約のケースもあります。この場合も、契約開始から1年以上経過していれば、いつでも退職できます(労働基準法137条)。また、合理的配慮の不提供など「やむを得ない事由」がある場合は、契約期間中でも即日退職が可能です(民法628条)。
退職代行の利用ケース
ケース:合理的配慮を得られなかったNさん(30歳・発達障害)
状況
Nさんは発達障害(ASD)の診断を受け、障害者雇用枠で事務職として入社。入社時に「業務指示は口頭ではなくメールかチャットでお願いしたい」と合理的配慮を申し出たが、上司から「特別扱いはできない」と拒否された。口頭指示についていけず、ミスが増え、「障害者だからって甘えるな」と叱責を受けるようになった。
退職代行の利用
退職エクスプレスに12,800円で依頼。退職届には合理的配慮の不提供の事実を記載し、メール・電話通知・郵送で送達。退職後、就労移行支援事業所に通い、自分に合った職場を探して再就職した。
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退職後に利用できる支援制度
就労移行支援事業所
障害のある方が一般企業への就職を目指すための訓練を受けられる事業所です。ビジネスマナー、PC操作、コミュニケーションスキルなどのプログラムがあり、最長2年間利用できます。利用料は原則無料(世帯収入による)です。
障害者就業・生活支援センター
就業面と生活面の一体的な支援を行う機関です。就職活動の支援だけでなく、日常生活の相談にも対応しています。全国に設置されています。
ハローワークの障害者専門窓口
ハローワークには障害者の就職を専門に支援する窓口があります。障害特性に応じた求人の紹介や、職場適応のためのジョブコーチ支援なども利用できます。
障害年金
障害の程度によっては、退職後に障害年金を受給できる場合があります。初診日に厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金、国民年金の場合は障害基礎年金の対象になります。詳細は年金事務所に相談してください。
退職は「終わり」ではなく「次のステップ」です:合理的配慮が得られない環境で無理に働き続けることは、障害の悪化につながります。自分に合った環境で働くことは、障害者の権利として法律で保障されています。退職して環境を変えることは、前向きな選択です。
よくある質問
障害者雇用枠でも退職代行は使えますか?
使えます。障害者雇用枠であっても退職は労働者の権利です。民法627条により、退職届を提出してから2週間で退職が成立します。障害の有無は退職の権利に影響しません。
合理的配慮が提供されない場合、即日退職できますか?
合理的配慮の不提供が「やむを得ない事由」(民法628条)に該当する場合、即日退職が認められる可能性があります。ただし、判断が難しい場合は弁護士や障害者就労支援機関に相談してください。
退職後に障害者向けの就労支援を受けられますか?
退職後も、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、ハローワークの障害者専門窓口など、さまざまな支援を受けられます。障害者手帳をお持ちの方は、お住まいの市区町村に相談してください。
