「お前は無能だ」「辞めてしまえ」「みんなの前で土下座しろ」——パワハラ上司の暴言は、受けた本人にとっては深刻な精神的苦痛です。しかし、泣き寝入りする必要はありません。

裁判所は、パワハラ上司とその会社に対して、しっかりと慰謝料の支払いを命じています。この記事では、パワハラで慰謝料が認められた裁判例をユーモアを交えて紹介しつつ、慰謝料の相場感もお伝えします。

なお、慰謝料の請求は弁護士の領域です。退職代行サービスでは対応できませんので、請求を検討される方は弁護士にご相談ください。

パワハラの法的定義——6つの類型

まず、法律上のパワハラの定義を確認しておきましょう。2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)では、パワハラを以下のように定義しています。

パワハラの3要素(全てを満たすもの)

厚生労働省は、パワハラを以下の6つの類型に分類しています。

では、実際の裁判例を見ていきましょう。

判例1:毎日の暴言で精神疾患——慰謝料150万円の判決

事案の概要

上司が部下に対し、他の従業員の前で「お前は使えない」「辞めてしまえ」「給料泥棒」等の暴言を日常的に繰り返したケース。部下は精神疾患を発症し、休職に追い込まれた。裁判所は上司個人と会社の双方に損害賠償の支払いを命じた。

「辞めてしまえ」が口癖の上司は珍しくないかもしれません。しかし、それを毎日聞かされる側の精神的ダメージは計り知れません。

裁判例の傾向として、日常的な暴言が精神疾患の発症につながった場合、慰謝料は100万円〜200万円程度が認められることが多いです。加えて、治療費や休業損害が認められることもあります。

注目すべきは、上司個人だけでなく会社も責任を負うという点です(使用者責任・民法715条)。会社には従業員の就業環境を整える義務があり、パワハラを放置していた場合は会社も損害賠償責任を負います。パワハラ上司を野放しにしていた会社は、「知らなかった」では済まされないのです。

この判例から学べること:日常的な暴言は立派なパワハラです。「言葉だけだから」「暴力は振るわれていないから」と我慢する必要はありません。精神疾患を発症した場合、慰謝料に加えて治療費や休業損害も請求できる可能性があります。

判例2:みんなの前で叱責・人格否定——公開処刑型パワハラ

事案の概要

ミスをした部下を会議室ではなくオフィスの中心で叱責し、「こんな簡単なこともできないのか」「小学生以下だ」と他の従業員の前で繰り返し人格を否定したケース。裁判所はパワハラを認定し、慰謝料の支払いを命じた。

業務上の指導と称して、わざわざ大勢の前で部下を叱りつける——いわゆる「公開処刑」型のパワハラです。

裁判例の傾向として、指導の必要性があったとしても、その方法が不適切であればパワハラと認定されます。「業務上の指導だった」「叱咤激励のつもりだった」という上司の弁解は、大勢の前での人格否定を正当化する理由にはなりません。

叱責が必要な場面があることは否定しません。しかし、それを行う場所・方法・言葉の選び方には配慮が必要です。「指導」と「侮辱」の境界線は、実はかなり明確です。人格を否定する言葉が入った時点で、それは指導ではなく侮辱です。

この判例から学べること:「指導のつもりだった」は免罪符にはなりません。大勢の前での叱責、人格否定を含む言葉、過度に長時間の説教などは、業務上の指導の範囲を超えたパワハラと判断されます。このような行為を受けている場合は、日時・場所・言われた内容を記録しておきましょう。

判例3:暴力を伴うパワハラ——慰謝料300万円超の判決

事案の概要

上司が部下に対して日常的に暴力を振るっていたケース。頭を叩く、胸ぐらをつかむ、物を投げつけるなどの行為が繰り返されていた。裁判所は高額の慰謝料を認定。

言うまでもなく、暴力は犯罪です。職場であろうが路上であろうが、人を殴れば暴行罪(刑法208条)、怪我をさせれば傷害罪(刑法204条)です。「職場の指導」という魔法の言葉で犯罪が合法になることはありません。

裁判例の傾向として、暴力を伴うパワハラの慰謝料は200万円〜500万円以上になることがあります。暴力の頻度・程度・被害者の受傷の程度によって金額は変動しますが、暴言のみのケースと比べて高額になる傾向です。

さらに、暴力によるパワハラは刑事事件にもなり得ます。民事の慰謝料請求に加えて、刑事告訴も可能です。パワハラ上司が「指導の一環だ」と言い張っても、警察は「暴行ですね」と淡々と対応するでしょう。

この判例から学べること:暴力を伴うパワハラは、民事上の損害賠償だけでなく刑事罰の対象にもなります。暴力を受けた場合は、怪我の診断書を取得し、警察への相談も検討してください。「職場の問題だから警察に言うほどではない」と思う必要はありません。暴力は暴力です。

判例4:退職に追い込むパワハラ——実質的な不当解雇

事案の概要

会社が特定の労働者を退職に追い込むため、過小な業務しか与えない、会議から排除する、席を隔離するなどの行為を組織的に行ったケース。裁判所は実質的な退職強要と認定し、慰謝料の支払いを命じた。

殴りもしない、怒鳴りもしない。しかし確実に追い詰める——「静かなるパワハラ」とでも呼ぶべきケースです。

仕事を与えない、会議に呼ばない、席を窓際(あるいは倉庫の隅)に移す。一つ一つは「たまたま」で片付けられそうですが、組織的・継続的に行われている場合は退職強要と認定されます。

裁判例の傾向として、このような行為が退職に追い込むことを目的として行われたと認められた場合、会社は慰謝料だけでなく、退職が無効とされたり、解雇と同様の扱いを受けることがあります。静かにやれば見つからないと思ったら大間違いです。

この判例から学べること:暴言や暴力だけがパワハラではありません。仕事を与えない、孤立させるなどの「静かなパワハラ」も違法です。このような状況に置かれている場合は、日時と内容を詳細に記録し、弁護士に相談しましょう。

パワハラ慰謝料の相場一覧

ここで、裁判例の傾向から見たパワハラ慰謝料の相場を整理しておきます。

パワハラ慰謝料の目安(裁判例の傾向)

ただし、これはあくまで裁判例の傾向であり、個別の事案によって金額は大きく変動します。パワハラの期間、悪質性、被害者の受けた損害(精神疾患の発症、休職、退職等)によって判断されます。

「暴言を毎日浴びせた上司に裁判所が命じた慰謝料は100万円」と聞くと、多いと感じる方も少ないと感じる方もいるでしょう。1日あたりに換算すると数千円。被害者の受けた精神的苦痛に対して、高いのか安いのかは本人にしかわかりません。

パワハラで退職を考えている方へ

パワハラが原因で退職を考えている方に、いくつかのアドバイスをまとめます。

退職代行の活用:パワハラ上司と直接やり取りせずに退職したい場合、退職代行サービスの利用が有効です。退職エクスプレスでは、退職届の作成・送付・電話通知をまるごと代行しています。パート・アルバイト9,800円、正社員・契約社員12,800円。パワハラ上司と顔を合わせることなく退職の手続きを進められます。

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ご注意:この記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。パワハラの慰謝料請求・損害賠償請求は弁護士の領域です。退職エクスプレスは退職届の送達を代行するサービスであり、法的な交渉や訴訟対応は行いません。慰謝料請求をお考えの方は、必ず弁護士にご相談ください。

退職エクスプレス編集部

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律相談ではありません。個別の事案については弁護士や各公的機関にご相談ください。退職エクスプレスは退職届の作成・送付・電話通知による退職意思の伝達を代行するサービスであり、会社との交渉は行いません。

よくある質問

パワハラの慰謝料の相場はどれくらいですか?

裁判例の傾向として、パワハラの慰謝料は数十万円〜数百万円の範囲が多く見られます。暴言程度で50〜100万円、暴力を伴う場合で100〜300万円、精神疾患の発症に至った場合はさらに高額になることもあります。ただし、個別の事案によって大きく異なります。

パワハラの証拠はどうやって集めればいいですか?

パワハラの証拠として有効なものは、録音データ、メール・LINEのやり取り、日記・メモ(日時・場所・内容・目撃者を記録)、診断書(精神的苦痛で通院した場合)などです。録音は、自分が当事者である会話の録音であれば違法ではないとする裁判例の傾向があります。

パワハラで退職する場合、退職代行は使えますか?

はい、退職届の送達については退職代行サービスを利用できます。ただし、パワハラに対する慰謝料請求や損害賠償請求は弁護士の領域です。退職エクスプレスは退職届の作成・送付・電話通知を代行しますが、法的な交渉は行いません。慰謝料請求をお考えの場合は弁護士にご相談ください。