退職を考えるとき、「法律ではどうなっているの?」という疑問は誰しも持つものです。退職に関わる法律は民法だけでなく、労働基準法(労基法)にも重要な規定がたくさんあります。

この記事では、労働基準法の中から退職に関連する条文を取り上げ、それぞれの意味と実務上のポイントをわかりやすく解説します。

労働基準法とは

労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。1947年(昭和22年)に制定され、すべての労働者を保護することを目的としています。

労基法1条:労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

労基法は強行法規であり、これに反する就業規則や労働契約は無効となります。労働者にとって最も基本的な「盾」となる法律です。

退職に関する主要条文一覧

労基法のうち、退職に関連する主要な条文を以下にまとめます。

労基法15条——労働条件の明示

条文の趣旨

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

退職との関連で特に重要なのは15条2項です。「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」と定められています。

つまり、「求人票に書いてあった条件と実際が違う」「面接で説明された待遇と異なる」という場合、有期雇用であっても即日退職が可能です。

労基法16条——賠償予定の禁止

条文の趣旨

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

「途中で辞めたら違約金100万円」「研修費用を全額返還すること」といった契約条項は、この規定により無効です。退職を理由にあらかじめ定められた金額の損害賠償を請求することは、労基法で明確に禁止されています。

注意:あらかじめ損害賠償額を「予定する」ことが禁止されているのであり、実際に生じた損害の賠償請求が一律に禁止されているわけではありません。ただし、通常の退職で損害賠償が認められるケースは極めて稀です。

労基法20条——解雇の予告

条文の趣旨

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

この条文はよく誤解されますが、会社が労働者を解雇する場合の規定です。労働者が自ら退職する場合には適用されません。「退職には30日前の予告が必要」というのは、この規定と混同した誤解です。

労働者の退職については民法627条が適用され、2週間前の申入れで退職が成立します。

労基法22条——退職時の証明

条文の趣旨

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

退職時に「退職証明書」を請求する権利が労働者にはあります。転職先に提出を求められた場合や、退職の事由を確認したい場合に活用できます。会社は遅滞なく発行する義務があります。

労基法23条——金品の返還

条文の趣旨

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

退職した労働者が請求した場合、会社は7日以内に賃金を支払い、預かっている金品を返還しなければなりません。給与の支払いが遅れている場合は、この規定を根拠に請求できます。

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労基法24条——賃金の支払い

条文の趣旨(賃金支払いの5原則)

賃金は、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならない。

退職時に最後の給与が支払われない場合、この規定に違反しています。「退職の仕方が悪いから最後の給与は払わない」という対応は違法です。退職の方法に関わらず、働いた分の賃金は全額支払われなければなりません。

労基法39条——年次有給休暇

有給休暇は労働者の権利であり、退職前に残っている有給休暇を消化することは認められます。

労基法附則137条——有期雇用の1年経過後の退職

1年を超える有期雇用契約の場合、契約初日から1年を経過すれば、労働者はいつでも退職の申入れができます。やむを得ない事由は不要です。

労基法と民法の関係

退職に関する法律は、労基法と民法の両方に規定があります。それぞれの役割を整理しておきましょう。

労基法は民法の特別法としての性格を持ちます。労基法に規定がある事項については労基法が優先され、労基法に規定がない事項については民法が適用されます。

労基法違反を見つけたときの相談先

会社が労基法に違反していると思われる場合、以下の相談先があります。

退職代行サービスの役割について:退職エクスプレスは退職届の作成・送達と電話通知を行うサービスです。賃金未払いの請求、解雇予告手当の請求、労基署への申告など、法律事務は行いません。これらの問題は弁護士や労働基準監督署にご相談ください。

まとめ

退職に関連する労基法の主要な条文を整理しました。

これらの規定は、退職する労働者を守るための重要なルールです。会社がこれらに違反している場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

なお、この記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。

退職エクスプレス編集部

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律相談ではありません。個別の事案については弁護士や各公的機関にご相談ください。退職エクスプレスは退職届の作成・送付・電話通知による退職意思の伝達を代行するサービスであり、会社との交渉は行いません。

よくある質問

労働基準法に退職の予告期間は定められていますか?

労働基準法には、労働者が自ら退職する場合の予告期間の定めはありません。労基法20条の「30日前の予告」は会社が労働者を解雇する場合の規定です。労働者の退職については民法627条が適用され、退職届から2週間で退職が成立します。

退職時に会社が離職票を出してくれない場合はどうすればいいですか?

離職票の発行は雇用保険法に基づく会社の義務です。会社が発行しない場合は、ハローワーク(公共職業安定所)に相談してください。ハローワークから会社に対して発行するよう指導してもらえます。

退職時に有給休暇は使えますか?

労働基準法39条により、退職日までの間に残っている有給休暇を取得することは労働者の権利です。会社に時季変更権(取得時季を変更する権利)はありますが、退職日が決まっている場合は変更する余地がないため、実質的に拒否できません。