「○○さんの退職届を送達いたします」——ある朝、見知らぬ業者からの連絡で部下の退職を知る。退職代行を使われた上司が最初に感じるのは、裏切られたようなショック、「なぜ直接言ってくれなかったのか」という困惑、そして自分のマネジメントへの不安です。

この記事では、部下に退職代行を使われた管理職の心理に寄り添いつつ、なぜこうした事態が起きるのか、次にどう行動すべきかを考えます。

退職代行を使われた上司が感じる5つの感情

1.ショック——「まさか」の衝撃

退職の兆候を感じていなかった場合、退職代行からの連絡は文字通り青天の霹靂です。「昨日まで普通に仕事をしていたのに」「最近は問題なさそうに見えていたのに」と、現実を受け入れるまでに時間がかかります。

2.困惑——「なぜ直接言ってくれなかったのか」

多くの上司が感じるのが、この疑問です。「自分は話しやすい上司だと思っていた」「普段からコミュニケーションをとっていたつもりだった」——しかし、部下がそう感じていなかったという事実に向き合う必要があります。

3.怒り——「こんな辞め方は非常識だ」

退職代行での退職を「非常識」「社会人としてありえない」と感じる上司もいます。引き継ぎもなく突然いなくなることへの怒りは、業務上の影響を考えれば理解できます。しかし、この怒りをそのまま行動に移すと、状況は悪化します。

4.自責——「自分のマネジメントが悪かったのか」

冷静になると、「自分に原因があったのではないか」という自責の念が湧いてきます。パワハラをしていた自覚がある場合はもちろん、特に思い当たることがなくても「気づけなかった自分」を責めてしまうことがあります。

5.不安——「他の部下にもされるのではないか」

一人に退職代行を使われると、「他の部下も同じことを考えているのではないか」「自分のチーム全体に問題があるのではないか」という不安が生じます。この不安は、残った部下への接し方にも影響を及ぼします。

これらの感情は自然なものです:退職代行を使われたショックは、信頼関係が壊れたと感じることから生じます。感情を否定する必要はありません。ただし、感情に任せた行動(本人への直接連絡、退職の拒否、他の社員への愚痴等)は避けましょう。

部下が退職代行を使った「本当の理由」

退職代行を使われた上司は「なぜ直接言ってくれなかった?」と思いますが、部下側には「直接言えなかった理由」があります。以下のいずれかに心当たりはないでしょうか。

上記のすべてに心当たりがなくても、部下の視点と上司の視点にはギャップがあります。「自分は話しやすい上司だ」という自己評価と、部下の実感が一致しているとは限りません。

上司だけの問題ではない——構造的な要因

退職代行の利用を上司個人のマネジメント不足だけに帰結させるのは不公平です。多くの場合、組織全体の構造的な問題が背景にあります。

組織の構造的要因

要因 具体例
人手不足による過度な業務負荷 一人が辞めたら回らない体制になっている
退職に対するネガティブな社風 退職者を裏切者扱いする風土がある
管理職への教育不足 マネジメント研修が行われていない
相談窓口の不備 ハラスメント相談窓口が形骸化している
評価制度の問題 頑張りが報われない、不公平な評価がある

上司一人がこれらの問題をすべて解決することは不可能です。しかし、自分が影響を及ぼせる範囲(自チームの環境改善)から始めることはできます。

次の部下に同じことが起きないために

退職代行を使われた経験は、辛いものです。しかし、この経験を「次に活かす材料」として受け止めることが、管理職としての成長につながります。

アクション1:1on1ミーティングを始める(または改善する)

月1回、部下一人ひとりと30分の対話の時間を設けましょう。この場では業務報告ではなく、「今の仕事にどう感じているか」「困っていることはないか」を聴くことに徹します。

1on1で使えるオープンクエスチョン

「最近の仕事で一番大変だなと感じることは?」

「チームの雰囲気で気になることはある?」

「半年後・1年後、どんな仕事をしていたい?」

「自分(上司)に改善してほしいことはある?」

アクション2:退職の申し出を受け入れる姿勢を見せる

「もし辞めたいと思ったら、いつでも言ってほしい。引き止めはしない」と明言しましょう。矛盾するようですが、この一言があるだけで、部下は安心して退職を申し出られるようになり、結果的に退職代行を使われるリスクが下がります。

アクション3:自分の言動を客観的に振り返る

自分が部下にどんな言葉をかけているか、声のトーンはどうか、無意識にプレッシャーをかけていないか——信頼できる同僚や上司に率直なフィードバックを求めることも有効です。360度評価を導入している会社であれば、その結果を真摯に受け止めましょう。

アクション4:業務の属人化を解消する

一人の退職で業務が回らなくなる体制は、組織としてリスクです。マニュアルの整備、ナレッジの共有、クロストレーニング(複数の人が同じ業務を担当できる体制)を進めましょう。「この人がいないと困る」状態は、その人自身にも大きなプレッシャーです。

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退職代行を使われても、管理職として成長できる

退職代行を使われたことは、管理職としてのキャリアにおいて決して「失敗」ではありません。この経験から何を学び、どう行動を変えるかが重要です。

退職代行を使われた上司へ:ショックや自責の念を感じるのは自然なことです。しかし、部下が退職代行を使った理由は、必ずしもあなた個人の問題ではありません。組織全体の環境、業務量、評価制度など複合的な要因があります。今できることは、「次の部下に同じ思いをさせない」ための行動です。

退職代行の利用が増えている現在、この経験を持つ管理職は決して少なくありません。大切なのは、この経験を糧にして、部下が安心して働ける(そして、辞めたい時には直接言える)チームをつくることです。

退職エクスプレス編集部

この記事を書いた人

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律相談ではありません。個別の事案については弁護士や各公的機関にご相談ください。退職エクスプレスは退職届の作成・送付・電話通知による退職意思の伝達を代行するサービスであり、会社との交渉は行いません。

よくある質問

部下に退職代行を使われたのは自分のせいですか?

一概に上司だけのせいとは言えません。退職代行の利用には、上司との関係だけでなく、組織の風土、業務量、待遇など複合的な要因があります。ただし、「直接言えなかった」背景に上司の対応が関係している可能性はあるため、振り返りは有益です。

退職代行を使った部下に連絡してもいいですか?

避けるべきです。退職代行を利用している時点で、本人は直接のやり取りを避けたいと考えています。直接連絡はトラブルを拡大させるリスクがあります。どうしても伝えたいことがあれば、退職代行を通じて連絡してください。

他の部下にも退職代行を使われないか不安です。どうすればいいですか?

定期的な1on1ミーティングで部下の本音を把握する、退職の意思表示を受け入れる姿勢を見せる、ハラスメントがないか自己点検するなどの取り組みが有効です。「退職を言い出しやすい環境」をつくることが、結果的に離職防止につながります。