仕事中のケガや業務が原因の病気で退職を考えた時、「退職したら補償は打ち切られるのだろうか」「治療費は自己負担になるのか」と不安になる方が多いです。
結論から言えば、労災保険の給付は退職しても打ち切られることはありません。これは労災保険法で明確に定められた権利です。この記事では、労災と退職の関係、退職後も継続する補償内容、手続き方法について詳しく解説します。
労災保険の基本|業務災害と通勤災害
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上の原因または通勤途中に発生したケガ・病気・障害・死亡に対して給付を行う制度です。
| 区分 | 業務災害 | 通勤災害 |
|---|---|---|
| 定義 | 業務に起因するケガ・病気 | 通勤中に発生したケガ等 |
| 具体例 | 工場での事故、長時間労働によるうつ病 | 通勤途中の交通事故、駅の階段での転倒 |
| 治療費 | 全額労災保険から支給 | 全額労災保険から支給 |
| 休業補償 | 給付基礎日額の80% | 給付基礎日額の80% |
労災に該当する精神疾患:長時間労働やパワハラが原因のうつ病・適応障害も、業務との因果関係が認められれば労災認定の対象です。2023年の厚生労働省の認定基準改正で、カスタマーハラスメント(カスハラ)も労災認定の対象に追加されました。
退職後も継続する労災給付
労災保険法第12条の5は次のように定めています。
労災保険法第12条の5:
「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。」
つまり、退職しても以下の労災給付はすべて継続します。
退職後も受けられる主な労災給付
| 給付の種類 | 内容 | 退職後の扱い |
|---|---|---|
| 療養(補償)給付 | 治療費の全額支給 | 治癒するまで継続 |
| 休業(補償)給付 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20% | 働けない期間中は継続 |
| 障害(補償)給付 | 後遺障害の等級に応じた一時金または年金 | 退職後でも申請可能 |
| 傷病(補償)年金 | 療養開始後1年6ヶ月経過しても治癒しない場合 | 要件を満たす限り継続 |
休業補償の計算方法
計算式:
休業補償給付 = 給付基礎日額 × 60%
休業特別支給金 = 給付基礎日額 × 20%
合計 = 給付基礎日額 × 80%
計算例:月収30万円の場合
給付基礎日額:30万円 ÷ 30日 = 10,000円
1日あたりの支給額:10,000円 × 80% = 8,000円
月額(30日分):約240,000円
※最初の3日間は待機期間として支給されません。業務災害の場合、この3日間は事業主が休業補償(平均賃金の60%以上)を支払う義務があります。
労災と退職のタイミング
労災認定前に退職してもいいのか?
労災の申請は退職後でも可能です。ただし、退職前に申請しておく方が手続きがスムーズです。理由は以下のとおりです。
- 在職中の方が会社に証明書類の記入を依頼しやすい
- 同僚の証言など証拠収集が容易
- 労災認定中は解雇制限がある(労働基準法第19条)
労災認定中の解雇制限
労働基準法第19条:業務上のケガ・病気で療養中の労働者は、療養期間中およびその後30日間は解雇できません。ただし、「自ら退職する(辞職)」ことは制限されていません。
つまり、労災で治療中に「辞めたい」と思った場合、自分から退職届を出すことは可能です。退職しても労災の給付は継続します。
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会社が労災を認めない場合の対処法
「うちでは労災は出せない」「自分の不注意でしょう」と会社が労災申請に協力しないケースがあります。しかし、労災の申請は労働者が直接、労働基準監督署に行うことができます。
会社が協力しない場合の対処:
- 労働基準監督署に直接相談に行く
- 申請書の「事業主証明欄」が空白でも受理される
- ケガや発症の経緯を時系列で記録しておく
- 目撃者の氏名・連絡先を控えておく
- 医療機関の受診記録を保管しておく
会社による「労災隠し」は犯罪です:労働安全衛生法第100条により、事業主は労災事故を報告する義務があります。労災隠しは50万円以下の罰金が科される違法行為です。労災を隠す会社に遠慮する必要はありません。
労災と傷病手当金の違い
| 比較項目 | 労災保険 | 傷病手当金(健康保険) |
|---|---|---|
| 対象 | 業務上・通勤途中の傷病 | 業務外の傷病 |
| 治療費 | 全額支給(自己負担0円) | 通常の3割負担 |
| 休業補償 | 給付基礎日額の80% | 標準報酬日額の約67% |
| 支給期間 | 治癒するまで(上限なし) | 通算1年6ヶ月 |
| 退職後 | 継続(退職の影響なし) | 条件付きで継続 |
業務が原因の傷病の場合は、まず労災の適用を検討しましょう。労災の方が補償内容が手厚く、退職後も安心です。
まとめ:労災の権利は退職しても失われない
仕事中のケガや業務が原因の病気で退職を考えている方に最も伝えたいのは、「退職しても労災の補償は続く」ということです。会社に遠慮して労災申請を諦める必要はまったくありません。
ただし、労災の損害賠償請求や後遺障害の認定に関しては、弁護士への相談をおすすめします。退職の手続き自体に不安がある方は、退職エクスプレスのLINE無料相談をご利用ください。
よくある質問
労災で治療中に退職しても補償は続きますか?
はい、労災保険の給付は退職後も継続します。労災保険法第12条の5により、「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されない」と定められています。治療費(療養補償給付)も休業補償(休業補償給付)も退職後にそのまま受給できます。
会社が労災申請を拒否した場合はどうすればいいですか?
労災の申請は労働者本人が直接、労働基準監督署に行うことができます。会社が申請に協力しなくても、労働者が自分で申請書を提出して問題ありません。労災申請に会社の「承認」は不要です。
退職代行を利用しても労災の申請はできますか?
退職代行の利用と労災申請は別の手続きです。退職代行で退職した後でも、労働基準監督署に労災申請を行うことは可能です。ただし、労災の申請には会社名や業務内容の情報が必要ですので、退職前に必要な情報を控えておくことをおすすめします。
